『Body Cocktail』の書評

ヴィ・ドウ

  氷室冴子の言葉で言うと山田詠美の『Body Cocktail』は「少女小説」である。この小説に対して周りの人の意見を聞くと、ほとんどの人が「好きじゃなかった」とか「読むのが恥ずかしい」とか、そして男の人達は「やっぱり少女を狙いとして書かれた」と言っていたけど、私はこの作品が好きだ。読みやすいし、少しだけでも語り手と分かり合えるし、私にとって有意義な見方が含まれているし、一言で言うと面白い。インターネットの「みっきー」によると山田詠美だけは読みたくないという人がたくさんいるそうで、その理由は彼女の価値観にあるとみっきーは思っている。山田詠美にとって大事なのは恋愛と自分と愛する相手であるが、日本社会が教えているのは家族を一番大切にすることである。アメリカで育ってきたからかもしれないけど、山田詠美の価値観は全然悪くないと思う。小説は読者が楽しめるためだけに書いているわけではなく、作家自身が表現したいことを書けるためでもあると私は思う。そしてある女の子たちにとって山田詠美の作品は自分が言えないことを表しているのかもしれない。社会のルールに抑えられ、女の子たちは自分の気持ちを表現出来ない状況にいるが、山田詠美が書いている言葉は彼女たちの声になって、彼女たちを救っていると思う。そして混乱(こんらん)しながら成長している女の子たちは小説の中の登場人物と自分を関係づけられ、少しだけでも安心出来て、そして時々いい相談も得られる。例えば恋はあせることはないということとか、自分はプレシャスであることなど。とても一読(いちどく)の価値(かち)がある作品だと思う。
   山田詠美の文体には特徴的な点が色々ある。『Body Cocktail』はだいたい俗語(ぞくご)で書かれている。それは少女たちを読者として狙っているので、彼らに読みやすくするためであり、登場人物を身近(みぢか)に関連づけるためであり、そして主人公の感想や気持ちを理解させるためだと思う。『Body Cocktail』が全般的にあからさまに書かれていることは山田詠美の小説の特徴の一つである。日本社会でタブーとされるトピック、言い換えると話してはいけない話題、について山田詠美は遠慮せず書いている。だけど時々重大なことをはっきり書かず、言葉を慎重(しんちょう)に選んで、遠まわしに言う。ある感じを上手く表現するためにメタファーをよく使っていることも山田詠美の特徴的な点である。
  山田詠美が『Body Cocktail』の中でテーマにしているのは「愛情」と「自分」である。そして「子供」から「大人」になる成長期(「大人びる」という時期)も一つのテーマになっている。山田詠美の作品では「自分」がたいへん大事であり、そして自分が今感じていることも非常に大切である。『Body Cocktail』にはカナという人物がこのテーマを代表している。彼女は彼氏を愛する気持ちが大事で、妊娠してしまっても平気でいられ、今の赤ちゃんを産んで育てたい気持ちが彼女にとって大事で、再考(さいこう)せず学校を止めて母になろうと決心した。『Body Cocktail』の語り手は子供でも大人でもなくて、大人びていく発達(はったつ)という時期にいるので、分からないことがたくさんある。山田詠美はそういう大人びる道の混乱さについて書いている。このようなことが『Body Cocktail』のテーマになっている。
『Body Cocktail』の情景(じょうけい)は高校の放課後である。語り手のクラスではカナという「大人びている子」がいて、語り手にとってとても魅力的な存在である。カナはまだ十七歳なのに「もう男の人とベッドに入ることを日常にして」いて、外国人のボーイフレンドもいる。妊娠してしまって、赤ちゃんを産んで育てるために学校を止めるつもりである。カナはクラスにいる女の子たちと違って「自分と自分の男の人たちのことを吹聴したりはしない」。カナは子供っぽい女の子たちのお喋りに冷たいが、語り手の話をちゃんと聞いたり、適切な相談に対して適切な返答(へんとう)を返したりする。語り手は男について自分の中の変化や前になかった芽生えてきた気持ちや分からないことで不安になる。そしてカナに気付かれ、結局カナに相談することになり、語り手は自分と自分の気持ちの大切さや素直になることをカナから学ぶのである。語り手は自分をカナと比べてまだまだ子供だと思っているが、彼女の考えなどを見れば本当は完全の子供ではない。でも語り手はカナほど大人びている訳ではない。語り手の両親が離婚した時に自分は「愛の結晶でもなんでもなかった」と最初は思っていたが、カナの言葉に影響され、自分が両親の「おいしいカクテル」だと積極的に思えるようになった。
  先に述べたように『Body Cocktail』の語り手は「大人びたい」女の子であり、恋愛について色々な分からないことや聞きたいことがある。語り手みたいに恋愛に関して混乱(こんらん)している状態にいる読者たちを安心させる役をしているかもしれない。他の言葉で言うと、語り手は「あなたは一人じゃないよ」という慰(なぐさ)めているのである。何があってもカナが冷静でいられることは、彼女の大人びている証(あかし)である。そしてカナにとって何よりも今の気持ちが非常に大事である。最後のところでは、彼女は赤ちゃんを産みたいという気持ちのせいで学校を止めようと決心した。人間は色々なことを学んだり体験したりした後シニカルや慎重(しんちょう)になってしまうのが普通だと私は思うが、カナはまだ自分の気持ちに素直でいる。カナは男の人とベッドに入っているので、汚いと思われるかもしれない。だが私から見れば、彼女は大人と子供のいい特徴を持っていると思う。大人の冷静さがあり、そして子供の素直さもある。とても素敵で魅力的な人物だと思う。
子供から大人に成長していくことは非常に難しいし、混乱や困難でいっぱいだと思う。この作品は少女を読者として書いてあるが、少女でも大人でも『Body Cocktail』を読むとたいへん大事なことを習えると私は思う。カナのように自分を大切にするということは、自分らしく生きることであって、そして自分の気持ちを忘れず大事にすることである。そして私が一番気に入っているレッスンは自分が「父と母のカクテル」であることで、そして私は大切に違いないと確信(かくしん)できる。