「Body Cocktail」の書評

エイミー丸谷

  山田詠美が書いた「Body Cocktail]は 女子高校生向けでもありますが 現代恋愛物語を好む女性の方々が読みそうな短編小説でもあります。 またこの作品は女子高校生である語り手の視点から繰り広げられているので 女の子が考えている事とかその気持ちは 女の子と女性には想像しやすいと想います。 そして思っている気持ちを そのまま正直に描いてあるため、文体は、スラスラと 読みやすく書かれています。この作品が書かれたのは1980年後半で 当時を時代背景にしてありますが、その時と 現代とあまり変わらない女子高校生達の想いを 描いたものです。 語り手は 一切 名乗りませんが、もう一人の子はカナといって、 作品の中で 唯一名前を持った登場人物です。カナに 名前が与えられているのは
彼女だけがすでに 自分が自分でいられるため、自分自身を理解しきっているからのではないかと思います。
  語り手は 普通の高校生活を送っているようですが、カナの場合まだ十七歳なのに もう色々な男の人とベッドに入っています。 語り手は カナがすでに男と寝ているのを知っていても、色んな事を クールに、そして簡単に済ませられる所が 大人になりかけているように見えて 惹かれていたのです。 しかし、大人に近そうな友達や、まだまだ分かっていない子供に見える周りのクラスメートの中では、語り手が一番大人びていて、ただそれを自覚していないと感じます。 そもそも語り手は 現実を見通せる所を ちゃんと持っていて、時には子供とは思えないくらいの 思いつきや考えをしている場面があります。 それでもカナが優雅に見えるのが変わらないので、自分がもう大人の体をしていても まだ子供の心を持っていると決め付けていました。そんな想いを持ったまま 毎日を過ごしていた中で、突然に カナが付き合っていた男性の子供を妊娠している事を 語り手だけに告白しました。 その上 高校も辞めて 子供を生む決心をしたカナが、語り手にとってあまりにも 自分が知っているカナではないことに驚きました。カナは自分が 母親になるのがまだ早すぎる場合、男の人と寝ること自体 まだ早すぎるのと同じだと言いました。 でも付き合っている男性との愛が自分にとって 決して早すぎるとは思えなかったそうです。 彼と結ばれて、一緒に作った美味しいカクテルが お腹にあるのをまだ捨てたくないのは、カナにとって自分でいられる大切なものは 恋愛とパートナーだから、それを失えばもう自分でいられなくなるだからのようです。
  カナがすでに男性と寝ている日常は、友達である語り手にしか知られていないので クラスの中では注目されてはいません。他の女の子たちみたいに、付き合っているか、好きな男の子たちのことで わいわい騒いだり、ちっぽけな事で いちいち大事にしないで、クールに黙って子供の話を聞いている様には 語り手にしか見えないので、 ますます魅力のある 色っぽい女性に見えているようです。 そんなカナは、学校ではいつもアクセサリーなしの シンプルな服装で決めて来るが、付き合っている男性からの 金のアンクレットをソックスの下に隠している事は 語り手にしか知られていないのです。そして男の人と一緒のシーツの上では 自分であるための証と 自分だけのルールの表現であるアンクレットを見せます。本当の自分でいる時の小道具だからです。 つまりカナはもう 自分は誰なのか 自分にとって何が大切なのか分かっていて、自分でいられるためにしなければならない事をこの物語の最後で やり遂げたのです。 カナはちょっと現実離れした面がありますが、語り手の場合、人生で何が常識なのかは 随分理解しているようです。 例えば、女の子が男の人と寝たからって、大人になったわけではないとか、親が離婚したときに 母親ではなく父親と一緒に暮らすのを決意したのは 自分は女で男である父親にとって必要だと思ったところが 結構大人になっている様に 私は思いました。 ただカナみたいな女子は、 まだ自分は誰なのかと 自分にとって何が大切なのかを まだ見つけていない純粋な女の子だと思います。
  正直に言いますと 私は根っから恋愛物語などは大の苦手で 一番避けているジャンルです。 女子として恥ずかしい面もありますが 大人になりきっていない者として 抵抗がありましたし こういう作品を読むのが好きとは 言えません。それに、私にとって この短編小説は可愛い過ぎるところが 読んでいる時はウンザリしました。 でも、物語のテーマである 他人に振り回されずに自分が 自分である為の意志を持つのは 現実では大事だと思います。 そして、二十年前の女子高校生を描いたこの作品は 現代の女子高校生との共通点がある所が 少しだけ私の高校生活を思い出させてくれました。 言われてみれば、男子も女子も 充分大人に見えていたけど、まだまだ頭も心も子供のままでした。 私の同級生でも 五人ぐらい妊娠してしまった女子もいましたし、カナみたいに五人とも高校を辞めて 子供を生んで育てることを決めた事を 記憶の中から思い出させてくれました。その時 私は 彼女たちのことを軽べつしましたけれど、この作品を読んだ後に もしかしたら一人だけでもカナみたいな気持ちで 生むこと決心したのかもしれないと 考え直させられました。