Body Cocktail
ディキンソン・カール

 山田詠美の短編小説の「Body Cocktail」は、「大人になるというのは何か」という主題を持ち、それについて深く考えさせる短編小説である。セックス、妊娠、結婚、大人になることなどに対しては、かなり冷ややかに書いてある。その上、ため口や俗語がよく出ているので、大変読みやすく、登場人物の感情を理解するのは難しくはないというのは確かだ。男性の主人公もいなく、女性同士での会話しか出てこないので、一見では、女性向けの小説だと判断してしまうことがあるかも知れないが、実際に読んでみると、かなり興味深く、女性だけでなく、男性に対する教訓もあるということに気付いてくる。私自身は男性であるが、男性の主人公がいないからと言って、この話が嫌いとは限らない。むしろ男性の主人公がいないからこそ、「Body Cocktail」が面白いと思う。何故かというと、女性の視点から考えさせられるからなのである。
 「Body Cocktail」には、主人公が二人しか出てこない。一人は自分のことを「私」と云い、ストーリーのナレーターである。「私」は、もう一人の主人公のカナに憧れている。「私」もカナも高校生であるが、二人の間には、経験も含めて大きな差がある。十七歳の「私」は自分のことをまだ子供だと思い、恋愛やセックスに対して分からないことが沢山あり、典型的な女子高生の一人に過ぎない。カナはもう既に男性と寝ることを日常にしている。気性は冷静であり、とてもクールな感じがする。カナは「私」と同じく十七歳の女子高生であるが、それ以上似た様なところはなく、普段は大人しかできない様な行動を当たり前の様にしている。「私」をカナと比較すると、簡単に言えば、「私」はまだまだ子供であるが、カナはもう大人である。
「Body Cocktail」は「私」とカナの高校での背景からストーリーが伝わってくる。昼休みや放課後に「私」とカナはよくお喋りする。「私」とカナの間には恋愛やセックスについての話がよく出る。カナと話す時は、「私」は自分が子供であることをますます感じてくる。「私」はカナがどれだけ男の人と寝ているのかちゃんと分かっているが、「私」が知らないのは、カナは高校生にしてはとても意外な秘密を抱いていることである。「Body Cocktail」の最後の方で、カナは自分が妊娠していることを「私」に明かす。そして、よく考えてからカナは退学することを決定する。
 前に言った様に、「Body Cocktail」はかなり面白い話だと思う。「大人になるというのは何か」について深く考えさせられた。大人になることに対しては、誰でも不安になることがあると思う。幼い頃は、何の心配もなく、陽気でいられるが、大人になりかけると、色々な悩みが出てきてしまう。「Body Cocktail」では、カナは妊娠する。普段は、妊娠というのは高校生にあり得ない程のことであるが、何故かカナはかなり冷静であり、何故そんなにさり気なくやっていられるのか、と不思議に思った。私自身は男性なので、妊娠はどれだけ大変なものなのか、恐らく一生分からないだろうが、この話を読み、女性の視点から考えさせられ、妊娠の大変さが前より少し分かってきたと思う。確かに男性は妊娠してしまう可能性は全くないが、「Body Cocktail」では、妊娠は大人になることに関し、象徴的なものとされている。カナにとって妊娠は成長する困難のうちの一つである。妊娠でなくても、成長期に、誰にでもこういう困難や悩みがある。これは当然なのだと私は思う。「Body Cocktail」では、成長期にどんな大変なことがあっても、妊娠であろうが、何であろうが、女性か男性かとは関係なく、まだ生きていける、まだ成長できるということがストーリーの教訓になるだろう。「Body Cocktail」が嫌いだという人が多いそうだが、こういった教訓があるので、個人的にはなかなか良い話だと思う。