「坊っちゃん」の毒舌

エイミー丸谷
 

 「坊っちゃん」は 夏目漱石の二番目の作品であり、日本の小説を代表するほどの名作品です。 漱石が明治28年4月から一年間ほど 中学教師として勤めていた体験を下に発表された 小説でもあります。 時代背景は 明治時代の前半で、今から百年も前に書かれたこの人気小説は 今でも 子供から大人までの読者に愛読されています。 あらすじは、江戸っ子の坊っちゃんである若い教師が、四国の松山にある中学校に 数学を教えに行く物語です。 この「坊っちゃん」という人物は 親譲りの無鉄砲で よく損ばかりしているのだと 語っているのですが、彼が損などするのは まともな考えをしようとはしなかったり 自分が根っから単細胞な性格で 無愛想だからでもあるのだと思います。 いつも心の中では 人に対して 皮肉なことしか考えていない様に見える彼は 意外に正義感に満ちています。 そして坊っちゃんの善悪に対しての 直情で頑固な感情は この小説の隠れた主題である「正義感」を表しているのだと思いました。 また この小説は そんな単純な坊っちゃんからの 視点から語ってあり、彼のありのままの 率直な考えや想いがそのまま 短文で表現してあるので 小気味いい印象を持ちます。 しかし確かに、文体と漢字の使い方や読み方が 古くて少々読みづらいのですが、それでも坊っちゃんの毒舌が あまりにもおもしいので 次へ次へと読みたくなる小説でした。
  物語では、坊ちゃんの少年時代から始まり、彼がどれほどいたずら好きで 自分勝手な少年だったのかを 愉快に描いてあります。当時にしか出来ないような 子供のいたずらばかりで、実に興味がある場面が多くありますが、なんとなく坊ちゃんがしでかすことは、馬鹿にも程があるような、しかし行動が可愛い過ぎて憎めない、そのような主人公が登場し、すぐに好きなりました。そんな坊ちゃんに 手を焼き、飽きれはてていた 彼の両親のかわりに、なぜか清という下女にだけ 我が子の様に可愛がられていました。やがて 坊ちゃんが青年に育った頃には 両親が死んでしまい 兄とはもう一切会わない状況になり、清が 彼の唯一の家族になりました。坊ちゃんは 仕事や商売が面倒くさいので、兄から貰ったお金を 学資にして物理学校で勉強をすることにしました。無事に卒業した後 特にあてのなかった彼は、校長の頼みを引き受けて 四国にある中学に 数学教師として赴任しに行くことを決めました。これも後先考えずに 決めたため、気がついたら 都会生活にしか慣れていない 江戸っ子坊ちゃんである彼が 田舎のど真ん中に行く羽目になっていました。そんなこんなで 駅で清と別れる時に 後もう少しで坊っちゃんは 泣くところだったそうです。ここでは 小説の中で彼が始めて 人に対しての 優しい感情を表現して 彼がそれほどの ひねくれた人間ではないと 分かりました。四国の松山に着いたら 赴任先の中学校に行ってみると、卑劣だったり 裏表があったり 無気力だったり あるいは気骨があったりする 同僚の教師たちに出会いました。 坊っちゃんはすぐにでも 江戸に帰りたいという気持ちになりました。 しかし 帰るための切符代がなかったので我慢して数学教師になった彼は 気まぐれに、校長には狸、教頭には赤シャツ、画学の教師は野だいこ、英語の教師はうらなり、数学の主任教師には山嵐と、初日からさっそく ちょっと馬鹿にした 綽名を付けていました。教師達のことでうんざりしている所で、今度は自分の生徒達に 物事を教えに教室に行くと 準備もせずに 敵地に乗り込む様な気だった坊っちゃんでした。 そして あまりにも 教師としてやる気がない彼は、ちゃんと生徒達が 数学が分かるかどうかも気にもせずに ちんぷんかんぷんな授業を 一ヶ月もしていました。 生徒達はすぐに 坊っちゃんが頼りのない 教師だと悟ったと同時に、週に一回ぐらい 彼に対して馬鹿馬鹿しい 嫌がらせを始めました。 そんな生徒達に これぽっちの感情を持っていない 坊っちゃんは彼らが 悪戯をするのは構わないけど それをやったのを認めないところが 許せなかったそうです。 ただ 嘘をついたり 悪戯をして そのうけるべきの罰から 逃げるだけだったら ろくな大人にしかなれず、そのまま誤魔化すばかりの人生だと 坊っちゃんは生徒達に 数学よりも 教えたかったのですが、なかなか伝わらなかったようです。
  近代小説がまだまだ確立していない 当時の時代性に思いをはせつつ読むと、明治の世に吹いた新しい風を感じさせたほどの作品である 「坊っちゃん」は、今まで読んだ小説の中で 一番 楽しく読めました。正義感が強くて 曲がったことが大嫌いな 頑固で単純な青年「坊ちゃん」は一度だけまともな教師として 勤めたところが実に面白かったです。 私は こんな猪突猛進な人が先生だったら、割と 面白いのかもしれないのだと思いました。