ツァイ ジミー

 今日は朝から忙しくなる気がする。
 午前11時、「営業中」の看板が外に出され次第、人々がこのレストランに続々と群れ集まっている。営業を始めてからまだ30分しか経っていないのに、列はすでにこの建物の外まで伸びている。まあ、この地区のOLたちは、大体この時間に休みを取るので、長い列ができるのは普通なのかなあ。しかし、これはちょっと怪しいよ。たいていの人はこのような混雑を見ると、列に並びたくないはずなのに、列はまだまだ伸び続けているようだ。やはり、この状況はひどすぎるので、私の同僚のダンさんは外で「行列制御」をやり、この混雑を緩和しようとしている。
 「申し訳ございません、列の最後尾はここではございません。列の最後尾はここから5ブロック離れたところにあります。」えーなんだって?「今のところ、列の最後尾にお立ちになると、一時間以上並んで待たなければいけません。お客様をお待たせしてしまって、お詫び申し上げます。」おいおい、このレストランだけがこの国際都市の唯一の飲食店ではないだろう。もしかして、みんなが今月の「食文化」を読んだのか。
 実は、数日前、料理に関する最も権威のある雑誌「食文化」が、このレストランのアップルパイを特集した。その特集のおかげで、マネージャーはこのレストランを改造して、アップルパイの専門店にしてしまいたそうだ。
 しかし、ここで働いている人は、その特集がこんな反響に至る可能性を想像できなかった。それで、僕は、今、周囲の情景に目を見張りながら、お客さんの注文を取ってる。
 「ああ、ここのアップルパイを一つお願いします。」
 「かしこまりました…アップルパイを一つ。」
 「あたし、アップルパイほしい〜」
 「はい、アップルパイを一つ。」
 「アップルパイ。」
 「はい。」
 そして、このように、僕とお客さんの会話はますます簡単になってしまった。まだたくさんお客さんが列に並んでいるので、これでいい。それに、お客さんは僕のお勧めを絶対に聞かないので、余計なことは喋らないほうがいい。僕はそう思いながら、次のテーブルに行った。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」僕はそう言いながら既に注文表に「アップルパイ」と書いている。まあ、このお姉さんはいくつのパイを注文するのかなあ。
「ええと、どうしましょうね…」ええ、パイを注文しないのか。
「あの、我々のアップルパイは、『食文化』によると、世界一なんです。」それは真実なので、どれほど誇っても大丈夫だ。
「あの、メニューがありますか。」
「ええ?メ、メニューですか…。」あんた、あほか?ここのアップルパイは世界一なんだよ!
「はい。あのう、どうして皆はアップルパイしか注文しないの?」
「あの、お客様は『食文化』という雑誌をご存知ですか?」
「しょくぶんか?それはなに?」冗談だろ…
「『食文化』はレストランをお勧めする雑誌です。そして、『食文化』の最新号が、我々のアップルパイを特集しました。」お姉さん、あなたはテレビを全然見ないでしょ。
「素晴らしいわね…でもあたしは結構です。」
「あ、そ、そうですか…」
 結局、彼女がその日、アップルパイ以外のものを注文した唯一のお客さんだった。だから、ここで働いている同僚の皆は彼女の事を「あの変なお客さん」と一日中ずっと呼んでいた。そして、マネージャーさんは閉店したとき、このレストランを改造する計画を店のみんなに公表した。やはり、このレストランは専門店になるね。この点から言うと、「あの変なお姉さん」はラッキーだった。明日から僕たちはアップルパイしか売らないからだ。
 仕事を終えた後、僕は晩ご飯を買うために、この近所のスーパーに行った。しかし、僕の大好きなインスタントラーメンのブランドを見つけられなかった。どんなに一生懸命探しても見つけられなかったので、結局、そばにいたかわいい20代の女性店員に聞いた。
「『フロレスインスタント』ですか?申し訳ございませんが、現在、そのブランドの商品は生産中止なんです…」
「え?何だって?」僕は毎日そのブランドのラーメンを食べているのに…
「売り上げがよくありませんでしたので…」
「いやいや、僕は買うよ。毎日だよ。」
「ああ、お客様が、噂の『毎日フロレスのラーメンを買うお客様』なんですね。」
「…」何だよ、その目線…
「はい?」
「…そんなに変なの?」
 あのお姉さんは本当にラッキーだったなあ。