山田詠美「Body Cocktail」

p. 6
目に見えないものに惹かれる程、余分なものに飢えてはいない。

自分の目や、そこから見て、心がとらえるものを、皆、素直に信頼しているのだ。

p. 9
彼女はいつもひとりで独立している。

他人に自分をすり合わせて、糸をひかせるようなべたついた関係を持たない。

なにも私たちの年頃でなくたって、人々は他人と組み合わせなくては自分の存在を確認できないんだもの。

p. 11
私は、見知らぬ男女を見ているような気がして、呆然としていた。私はこの見たこともない男と女と共に、何年も暮らして来たのだと思うと、とても不思議な気がしてならなかった。

だって、男の人の方が女である私を必要としているように、その時、思ったのだ。

男と女のことに関する限り、時には幸福よりも不幸の方が人をひきつけるものだということを私は、その時、学んだのだった。

p. 17
子供の手段を使わない女の人は、りっぱだとは思うけれど、愛を失いやすいのではないかしら。

p. 18
「外国ではどちらにあげてもいいんだって。」

p. 19
悲しみは女を大人と子供に分けるけれども嬉しさや楽しさは多分違うのだ。

年齢に似合った場所で年齢に似合わない心を持て余している彼女を知ることはないのだ。

p. 21
彼女の年齢に似合わない優雅が失われてしまうなんて、絶対によくない。

p. 23
けれど、愛が失くなった時、子供はただの一個の人間として、放り出されるのだ。(?)

p. 25
人間なんて、所詮、別々なのよ。どんなに愛し合ったって、体が離れれば、他人同士に戻るし、心が、通じ合っていたって、そのつながれた心って簡単に切り離されちゃうこともあるのよ。

他人同士があやういもので結ばれてるのって、すごく繊細なことだと思うの。そうね、お酒のカクテルみたいなものかもしれないって近頃、思う。一種類のお酒だけじゃ、強くて飲めないけど、色々甘いのやら、苦いのやらを混ぜると、おいしいカクテルになるでしょ。