吉本ばなな「とかげ」に入っている6編の小説

1.新婚さん
2.とかげ
3.らせん
4.キムチの夢
5.血と水
6.大川端奇譚

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 あとがき(afterword, postscript)より

この本の中に収められた小説は、おおよそ2年くらいの間に書かれた物です。全部、「時間」と「癒し」、「宿命」と「運命」についての小説です。

(宿命=前世に決まった運命。karma)

「生きていくことは地獄だ」というのは「生きていくことは天国だ」と全く同じ「意味の分量」で置き換えられることであるような気がします。どちらがいいとか悪いとかではなくて、自分、という意識をとにかく続けていくこと自体の中に、天国や地獄というような何かが生じるのです。その、続けていくことについて描きたくて書きました。重い話や、宗教の話が多いのはそのせいでしょう。

I believe that something like heaven and hell are created in the continuation of the consciousness that is ‘self,’ that life as heaven on earth and life as hell on earth are actually interchangeable concepts that are neither “good” nor “bad.” (Spies, 2000)

 ここに出てくる人々は、すべて一般には希望と呼ばれる変化の一歩手前にいて、突然何かに気づいてしまって忘れていた感覚がよみがえってきたり、今までの状態にはなかったある種の行動力を必要とされたりする時期にいます。そのとまどいとか精神的な荷物をまとめていくようなこころもとなさとか、そのすっきりした気持ちとか、そういったことがテーマになっています。

All of the people in the stories are on the brink of a change, so-called hope, where they finally notice something all of a sudden and remember some feeling that they had forgotten or where a certain kind ability to act, that had not been necessary up to this certain point becomes so. It is the bewilderment, the uneasiness that is like the consolidation of emotional baggage, and the refreshed feeing that occur at this point of change that are the themes of the stories. (Yoshimoto, Lizard 175)

 

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Spies. A. (2000). The sexual revelation: finding sexuality in Yoshimoto Banana’s writing. B..C. Asian Review 12. 86-101